ラリベラの岩の聖堂群:大地を掘り下げて作られた、アフリカのエルサレム

世界遺産で宗教建築を学ぶとき、ほとんどの建物は「石や木を『積み上げて』作ったもの」です。しかし、このラリベラだけは完全に真逆。「巨大な岩盤を『下へ下へと掘り下げて』削り出した」という、世界でも類を見ない構造をしています。

標高約2,500メートルの山岳地帯に突如として現れる、11の凄まじい「くり抜き聖堂」の秘密に迫ります。

基礎データ

  • 登録年: 1978年(第1回世界遺産委員会)
  • 分類: 文化遺産
  • 登録基準: (i) 人類の創造的才能を表現する傑作、(ii) 建築や技術の交流、(iii) 独自の文化的伝統の存在を証明するもの
  • 所在地: エチオピア連邦民主共和国

ここが凄い3つのポイント

① 地面を「くり抜いて」作った11の聖堂

ラリベラの聖堂群は、赤い凝灰岩(火山灰が固まった岩)の硬い地盤を、ノミとハンマーだけでくり抜いて造られました。

驚くべきは、ただ岩に穴を掘って洞窟にしたのではないという点です。まず地面を四角く深く掘り下げて「中庭」のような空間を作り、中央に残った巨大な岩の塊を、さらに外側と内側から緻密に削っていくことで、屋根、柱、窓、さらには内部の美しい彫刻に至るまで、「一つの巨大な岩から繋がった一本構造の建物」として完成させています。これが登録基準(i)の「人類の創造的才能の傑作」とされる所以です。

② 「新エルサレム」を目指した壮大な計画

12世紀〜13世紀頃、エチオピアを統治していたザグウェ朝のラリベラ王は、イスラム勢力の拡大によってキリスト教徒が聖地エルサレムへ巡礼することが困難になったため、この地に「第二のエルサレム(新エルサレム)」を建設しようと決意しました。

周囲を流れる川を「ヨルダン川」と名付け、11の聖堂を地下のトンネルや通路で複雑に連結させました。外敵から見つかりにくいよう、あえて「地下」に街を隠すように造ったとも言われています。

③ 完璧な十字架の奇跡「聖ゲオルギウス聖堂」

11ある聖堂の中でも、最も美しく、最も有名なのが「聖ゲオルギウス聖堂」です。

地上から見下ろすと、地面にぽっかりと開いた深い穴の底に、完璧なギリシャ十字(正方形の十字架)の形をした屋根が姿を現します。三階建てのビルに相当する高さ(約12メートル)があり、中壁や窓の装飾も一切の妥協なく削り出されています。「夜の間に、人間ではなく天使たちが手伝って削り進めた」という伝説が残るのも納得の神聖さです。

試験・知識のワンポイント:今も現役の「生きている遺産」

世界遺産の試験や、文化遺産の価値を理解する上で非常に重要なのが、ここが「過去の遺跡」ではないという点です。

エチオピアは4世紀に世界で2番目にキリスト教を国教とした歴史を持ち、独自のエチオピア正教が育まれてきました。ラリベラの聖堂群は、1200年代の完成から今日に至るまで約800年間、一瞬たりとも途切れることなく現在も現役の聖拝所・修道院として機能しています。

白い布をまとった大勢の巡礼者が毎日地下に下り、厳かに祈りを捧げる姿は、登録基準(iii)の「生きている文化的伝統の証明」そのものです。

まとめ

ラリベラの岩の聖堂群は、「岩盤を一塊のまま削り出した前代未聞の建築技術」「アフリカに築かれたもう一つのエルサレム」、そして「今も熱い信仰が息づくエチオピア正教の聖地」として、1978年の第1回で選ばれるべくして選ばれた至高の文化遺産です。

「積み上げたアーヘン大聖堂」と「掘り下げたラリベラ」を対比させて覚えておくと、中世のキリスト教建築への理解が何倍も深まりますよ!

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