世界遺産でヨーロッパの中世初期の歴史や建築を学ぶとき、このアーヘン大聖堂は「西ヨーロッパの統合とキリスト教世界の中心地」として、最重要のポジションに位置しています。
フランク王国の国王であり、西ローマ皇帝として戴冠したカール大帝(シャルルマーニュ)が、自身の宮殿の礼拝堂として8世紀末に建設を始めた、ヨーロッパの歴史そのものを体現する聖堂です。
基礎データ
- 登録年: 1978年(第1回世界遺産委員会)
- 分類: 文化遺産
- 登録基準: (i) 人類の創造的才能を表現する傑作、(ii) 建築や技術の交流、(iv) 建築様式や都市景観の傑出した見本
- 所在地: ドイツ連邦共和国
ここが凄い3つのポイント
① 1200年前の「八角形」の小宇宙:パロティン礼拝堂 大聖堂の核となっているのが、カール大帝が建てた「パロティン礼拝堂(宮廷礼拝堂)」です。 上空から見ると、中心部が美しい八角形(オクタゴン)の構造をしています。キリスト教において「8」は復活や永遠の命を象徴する聖なる数字。当時の西ヨーロッパにはこれほど高度な石造建築技術がなかったため、大帝はイタリアのラヴェンナにある「サン・ヴィターレ聖堂」などをモデルにし、ビザンツ様式(東ローマ帝国)の技術を取り入れて建てさせました。これが登録基準(i)および(ii)の「文化・技術の交流」の最高の見本です。
② 30人以上のドイツ国王が誕生した「大理石の王座」 礼拝堂の2階には、カール大帝が座ったとされる非常にシンプルな「大理石の王座」が遺されています。 カール大帝の死後、936年にオットー1世がここで戴冠式を行って以降、1531年までの約600年間にわたり、神聖ローマ帝国のドイツ国王31人がこの王座に座って戴冠式を執り行いました。まさに中世ヨーロッパの権力の頂点がここにありました。
③ ガラスの家と称される「ゴシック様式の合唱席」 カール大帝没後600年を記念して、14世紀から15世紀にかけて八角形の礼拝堂の東側に付け足されたのが、高さ約32メートルの壮麗な合唱席(コーラス)です。 壁面のほとんどが巨大なステンドグラスで埋め尽くされており、光が差し込むとその美しさから「アーヘンのガラスの家(Aachener Glashaus)」と称されます。中世初期の重厚なロマネスク/ビザンツ様式と、中世盛期のきらびやかなゴシック様式が絶妙に融合した、建築の見本市(登録基準iv)です。
試験・知識のワンポイント:カール大帝の遺骨と4大聖遺物
世界遺産の歴史的価値や観光としてのハイライトになるのが、大聖堂に安置されている「聖遺物(キリストや聖人にゆかりのある品)」です。 合唱席には、カール大帝の遺骨が納められた金銀に輝く「カール大帝の棺」のほか、イエス・キリストが身にまとっていたとされる下着、聖母マリアの衣服など、キリスト教世界における一級品の聖遺物が保管されています。 中世から現代に至るまで、これらを目当てにヨーロッパ全土から膨大な巡礼者が訪れる「聖地」としての役割を、アーヘン大聖堂は今も現役で果たし続けています。
まとめ
アーヘン大聖堂は、「カール大帝がビザンツの技術で作らせた八角形の礼拝堂」「神聖ローマ帝国国王たちの戴冠の地」、そして「ロマネスクとゴシックが奇跡の融合を遂げた建築美」を持つ、ヨーロッパ世界の原点ともいえる世界遺産です。
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