世界遺産における産業遺産の先駆けであり、同時に「人間の芸術的才能の結晶」でもあるのがこの岩塩坑(塩の鉱山)です。
地下100メートルから300メートルを超える深さに、なんと全長300キロメートル近くに及ぶ坑道が網の目のように張り巡らされています。その中に一歩足を踏み入れると、坑夫たちが数百年にわたって彫り上げた、にわかには信じられない「すべてが塩でできた世界」が広がっています。
基礎データ
- 登録年: 1978年(第1回世界遺産委員会 ※2013年にボフニャ岩塩坑などを加えて拡張登録)
- 分類: 文化遺産
- 登録基準: (iv) 建築様式や技術、産業の見本
- 所在地: ポーランド共和国
ここが凄い3つのポイント
① 13世紀から20世紀まで稼働し続けた「王国の富の源」 この岩塩坑は、中世(13世紀)から1990年代に商業採掘が終了するまで、約700年もの間、絶え間なく塩を生産し続けた世界最古級の鉱山です。 かつて塩は「白いゴールド」と呼ばれるほど価値が高く、クラクフを首都としたポーランド王国の国家財政の実に3分の1以上が、この岩塩坑から得られる利益で賄われていました。そのため、歴代の王によって手厚く保護され、「王立(王宮所属)」の産業として発展を遂げました。
② すべてが塩!圧巻の地下大聖堂「聖キングガ礼拝堂」 観光と芸術のハイライトが、地下101メートルに位置する巨大な「聖キングガ礼拝堂」です。 テニスコート数面分、天井の高さは約12メートルという広大な空間ですが、床、壁、天井、立ち並ぶ彫刻、さらには天井から吊り下げられたきらびやかなシャンデリアに至るまで、すべてが「岩塩(塩の結晶)」を削り出して作られています。 壁面にはレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を模した見事なレリーフも彫られており、地下の鉱山であることを忘れてしまうほどの神聖さと美しさです。
③ 坑夫たちの信仰心と遊び心が生んだ彫刻群 地下での採掘作業は、常に落盤やガス爆発、浸水などの危険と隣り合わせの過酷なものでした。そのため、坑夫たちは暗闇のなかで無事を祈り、地下のあちこちに数多くの礼拝堂や聖人の像を彫り上げました。 さらに、ポーランドの生んだ偉人コペルニクスの像や、歴史上の物語を再現した像なども彫られており、これらはすべてプロの芸術家ではなく、日々ここで働いていた本物の坑夫たちが独学の技術で彫り進めたものです。
試験・知識のワンポイント:「産業遺産」としての技術的価値
世界遺産の試験において、この遺産は「美しさ」だけでなく「採掘技術の発展の歴史」という側面(登録基準iv)で評価されています。 13世紀の原始的な手掘りや馬を使った巻き上げ機から、近世・近代の機械化に至るまで、各時代の最先端の鉱山技術の遺構がそのままの形で保存されています。2013年の拡張では、隣町にある「ボフニャ岩塩坑」や、塩の管理・販売を行っていた「クラクフ城(塩城)」も追加され、生産から流通までの一連の産業システムが世界遺産として完璧に評価される形となりました。
まとめ
ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑は、「ポーランド王国の繁栄を支えた白いゴールドの故郷」「坑夫たちの不屈の信仰心が作った塩の彫刻世界」、そして「700年の産業の歩みを遺す最高峰の鉱山遺産」です。
「世界遺産第1号の地下宮殿=すべてが塩でできたヴィエリチカ」として、その圧倒的なビジュアルとともに記憶しておきましょう!
