世界遺産を勉強していく中で、このシミエン国立公園は「世界で最も荒々しく、最も美しい高地生態系の一つ」として記憶してください。
エチオピア高原の一角に位置し、その独特すぎる地形から「アフリカの天井」、あるいはその奇怪な岩峰の並びから「神々のチェス盤」とも称される、地球のへそ(大地溝帯)が生んだ奇跡の場所です。
基礎データ
- 登録年: 1978年(第1回世界遺産委員会)
- 分類: 自然遺産
- 登録基準: (vii) 類まれな自然美、(x) 絶滅危惧種
- 所在地: エチオピア連邦民主共和国
ここが凄い3つのポイント
① 壮絶な「浸食」が作った、千尋の谷と岩の塔 シミエン国立公園の最大の特徴は、見る者を圧倒するその地形です。 数億年前の大規模な火山活動によって堆積した分厚い玄武岩の台地が、気の遠くなるような年月をかけて雨や川に激しく削り取られました。その結果、深さ1,500メートルにも達する垂直の断崖絶壁や、ナイフの刃のように尖った奇岩の塔が延々と続く、地球上どこを探しても似た場所のない壮大な景観が誕生しました。これが自然美の基準(vii)を満たしています。
② ここにしかいない!ユニークな「固有種」たちの聖域 標高の高さと孤立した地形により、シミエンには独自の進化を遂げた絶滅危惧種(登録基準x)が暮らしています。その代表格が以下の3種です。
- ジェラダヒヒ: 胸にある赤いハート型の皮膚が特徴。草食の珍しいヒヒで、数百匹の巨大な群れを作って断崖絶壁を驚異的な身体能力で移動します。
- ワリアアイベックス: 世界でこのシミエンの崖にしか生息していない、大きな角を持つ野生のヤギ。
- アビシニアジャッカル: エチオピアの高地のみに生息する、世界で最も希少なイヌ科の動物。
③ アフリカなのに「寒い」世界 「アフリカ=赤道直下の熱帯」というイメージを覆すのがこの場所です。 最高峰のラス・ダシャン山(標高4,533m)を擁するこのエリアは、標高が非常に高いため気温が低く、夜間には氷点下になることも珍しくありません。熱帯のアフリカでありながら高山植物が咲き乱れる、まさに「天空の楽園」です。
試験・知識のワンポイント:長きにわたる「危機遺産」からの復活劇
世界遺産の試験でシミエン国立公園が出題される際、最も重要なキーワードとなるのが「危機遺産リスト」です。 公園内に周辺の住民が移住してきたことによる過放牧、農地拡大のための森林伐採、さらには内戦による治安の悪化によって野生動物の数が激減し、環境が著しく悪化しました。その結果、1996年に危機遺産リストに登録されてしまいます。
しかし、エチオピア政府や国際社会の協力によって、住民の移転や観光収入を地域へ還元する仕組み作り、生態系の保護活動が粘り強く進められました。動物の個体数が回復したことが確認され、2017年にようやく危機遺産リストから除外(脱出)されました。20年以上にわたる保護の闘いの歴史を持つ遺産です。
まとめ
シミエン国立公園は、「玄武岩が削られてできた圧倒的な断崖絶壁」「ジェラダヒヒやワリアアイベックスなどの貴重な固有種」、そして「危機遺産を20年以上かけて克服した不屈の歴史」を持つ遺産です。
ガラパゴス諸島と並び、「生き物たちの楽園であり、人間の環境破壊とも闘った第1号自然遺産」として整理しておきましょう!
